ある日、「あそこに飛行機のあるね。」とおばあちゃんが言った。
そこには、どこにでもある一軒家が数件、軒を並べている。
この辺りは住宅街。自転車くらいの大きさの飛行機であれば、降りたてるかもしれない。
「あそこに飛行機の斜めんなってね~。白いのに赤い線の入っとるやろもん?」
それから数カ月、毎日、飛行機はその場所に降りたっていた。
その飛行場がいつの間にかなくなり、年末も近付いてきたある日。
「昨晩ね、そこでおばあちゃん達のね、餅つきばしよったとよ。遅くまで…。」
飛行場があった場所で、今度は餅つきが始まった。
この辺りは住宅街。餅つきくらいはできる大きさの屋根がある一軒家もある。
日によっては遅くまである時、早々に切り上げる時があり、賑やかな時と静かに黙々と餅つきをしている時があった。
「みんな一生懸命でね~。昨日は6人くらいおったかな~。う~ん。」とその表情は真剣そのもの。
それから数カ月、ほぼ毎日、3~6人おばあちゃん達が集まり、餅つきに精を出していた。
そんな餅つきのおばあちゃん達が解散した、春から夏に季節が移り変わろうとしているある日。
「牛のおるね~。ジーッとしてて、おとなしいね。は~。」
飛行場の跡地にあった餅つき場は、牛が放牧している牧場?となった。
何度も言うように、この辺りは住宅街。昔は牛を飼ってある所もあったかも…。
牛も日によって何頭もいる時と、そうでない時があった。
「しかし、おとなし~ね~。かわいい顔して~、ねえ~、う~ん。」そう言いながら、愛おしそうに牛たちを眺めるおばあちゃん。
それから、現在にいたるまで、牛は毎日放牧され、のんびりしている。
数カ月ごとに窓から見える景色が変わる。その景色が変わるのが楽しみで仕方ない。
おばあちゃんの現実と自分の現実、どっちが本物かなんてどうでも良い。
言ってしまえば、どちらも本物。
一つの世界の一つの場所に、違う現実がいくつも存在しているだけのこと。
さて、次はあの場所でどんな物語が始まるのかな~(^-^)楽しみ楽しみ(^O^)
窓から見える景色がリアルに伝わってきます。
季節ごとに見える物語が変わるのも不思議で
おもしろいですね。
記憶の奥にしまわれていた思い出が
窓の外いっぱいに広がり、物語が始まる。
絵本を読んでるみたいです。
私自身、歳をとる不安や心配もあるけど、
窓の外に何があるのか見てみたい気持ちに
させられました。
コメントありがとうございます。
窓の外には、自分が見えるものとは少し違った景色が広がっているのでしょうね。
自分もその目になってみたいな~と時々思います。
日々、想像をはるかに超えた世界に興味津々になりますね(^-^)