ノブコさんの第2宅老所よりあい

ある日、第2宅老所よりあいの庭で育てている大根を抜いて大根餅を作ろうということになりました。職員が準備していると、ノブコさんが「手伝おうか?」と言って下さいました。

以前、食事作りでボランティアをされていたのもあり、手際よく大根を1本あっという間におろされます。結構力もいるし時間がかかる事なのにケロッとされています。

職員が片栗粉やネギを大根おろしに混ぜて形を整えた物をフライパンで焼くのをお願いすると、手際よく焼き上げられ餅をひっくり返すのも私よりも早く上手に仕上がります。

お年寄りが作ったものを今までなかなか食べる機会がありませんでした。しっかり味わって食べると、とても良い焼き加減で柔らかすぎず硬すぎず、美味しく頂きました。

別の日。

「家ではあまり運動しないから」と、手すりを持ってスクワットをし始められます。軽快にしながら「これからここに来たら毎回しようかな」と30回ぐらいされました。

他の日には見ていた職員が「踵を挙げてやった方が良いですよ」と伝えると、「あら、そうなの?」と言いながら踵を挙げたままスクワットをし始められました。それを見た私は踵を上げたまま出来るんだ⁉ と驚きました。

 

見ていた職員も「あ、私も一緒にします」とノブコさんの隣で一緒に「1,2,3,4!」と始めたのですが、職員のほうが先に「あ~もう疲れた~、無理です。」と先に音を上げ止めてしまい、まだ続けているノブコさんを見て「ノブコさんすごいですね。」と目を丸くしていました。

「何をこん位で音を上げて!」と笑いながら続け、「もう何回やったやろ?そろそろやめよ。」「あっ、やり過ぎた足が痛い」と笑いながら席へもどられます。

ノブコさんの自宅はマンションの4階でエレベーターがなく、出かける時は階段で上り下りしています。私も初めて自宅を伺った時は大変驚きました。

102歳という年齢も驚きですが、こうやって一緒に時間を楽しんでいるとお互いに元気をもらえてるような気持になります。

 

今日もヒヤヒヤしながら、ノブコさんと一緒に4階まで登っています。

台所の王女たちⅡ

第2宅老所よりあいです。

今回は、よりあいつうしん26号に掲載しました「台所の王女たち」でご紹介できなかった方々をご紹介したいと思います。

昨年の夏に書いていた記事のため、季節感が逆になっているのはご容赦ください。

20230711_111517クレオパトラの皆さん

クレオパトラは村上さん、阿武さん、空閑さん、坂口さんが交代で食事作りに来てくれています。第2よりあいの近隣地区の長丘公民館で活動をしておられる方々です。

第2よりあいではほぼ毎週火曜日に昼食を作りに来てくれます。火曜日は週に一度の魚の日です。その日届いた魚に合わせて献立を考えておられるそうです。

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この日、食事がなかなか進まないヨウコさんがポテトサラダをペロッと召し上がりました。ごちそうさまです(#^^#)

20230713_100653エリザベスの皆さん

エリザベスのグループ名は、以前勤めていた女性職員が命名したそうです。瀬尾さん、佐田さん、西村さんの3名でお手伝いに来てくれています。

佐田さんのきっかけは、以前よりあいの森に暮らしていたお年寄りの家族の村川さんに誘われたとか。もう、10年以上お手伝いくださっています。「月に一回の楽しみですよ~」と笑顔で話してくれました。

20230728_124624クローバーBの皆さん

吉井さん、小金丸さん、立野さんの三人ででお手伝いに来てくださってます。この日は、立野さんがお休みでした。

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昼食が終わると、上の写真のようにノートに献立などを記入しています。吉井さんは、献立の料理を自宅で試しに作られることもあるそうです。

お話を伺った時、ブログの話をすると小金丸さんは「そんな、好きで来てるから気にしないで」と笑顔でおっしゃっていました。

 今回、通信の掲載にともない第二よりあいに食事作りのお手伝いをして下さる方々にお話を伺いました。通信の中でも書きましたが、皆さんに口々に「楽しみながら来ていますよ~」との言葉。台所の明るい雰囲気が、広間の集いも明るくしてくれることも沢山あります。

生きることになくてはならない「食」を支えてくださる女王たちの食事と、温かい気持ちが第2よりあいという場所に集まり、お年寄りも職員も支えられています。ここでできたつながりは縁となり、ひとりひとりの支える、支えられるの関係になっていきます。

 

本年もよろしくお願い申し上げます。

「谷川俊太郎をうたう」歌のプレゼント

先日、第2よりあいでDIVAコンサートが開催されました。

今回のコンサートは、福岡ひかり福祉会を支えてくれている地域福祉ボランティア「ケケコの会」からプレゼントしていただいたものです。

「ケケコの会」は、よりあい・ひかりの職員、元家族、ボランティアで構成されています。

3か所のよりあいのお年寄り達、職員、日頃第2宅老所よりあいに関わって下さっているボランティアさん達で会場の第2よりあいはすぐに満席となってしまいました。

コンサートは言うまでもなく最高でした♪♪

爽やかな秋晴れの中、吹き抜ける風も心地よく、染み入るように響く谷川さんのピアノ、大坪さんのベース、まこりんの歌声…。

ゆっくりゆきちゃん

伯爵夫人

さようなら

遠くへ

かえる

よりあいの歌

谷川俊太郎さんの詩が歌になってみんなの耳に届きます。

本当にとても良い時間でした…。

 

この場所に人が集い、久しぶりの再会や、新しい出会い、歌を通じて同じ感覚を共有する。

第2宅老所よりあいがたくさんの方々の応援や寄付等で作られた場所であることを、今回のコンサートを通じて改めて実感しました。

そして、この場所に第2宅老所よりあいができた当時を知る人たちと、一緒に時間を過ごせることがいかに貴重であるかを気づかされる集いにもなりました。

今回は「ケケコの会」からのプレゼントによるコンサートでしたが、今度は第2宅老所よりあいが直接DIVAをお呼びし、今回、足を運べなかった方々へもDIVAの歌を届けたいと考えています。

 

この度は「ケケコの会」の皆さん、こんなに素晴らしいプレゼントをありがとうございました。

“その歌”は

ある日のことでした。いつものように集いの場で、皆さん新聞を読んだり、おしゃべりをしながら過ごしていました。

その中で、フサエさんが”その歌”を突然歌い始めました。フサエさんが歌うのは決して珍しいことではなく、”げんじ唐いものうた”という十八番の歌があります。

けれど、”その歌”は初めて聞く歌!!

「これ、何の歌?」フサエさんと付き合いの長い職員も聞いたことがないのです。周りにいた職員がざわつき始めます。

「フサエさん、もう一度歌ってください」と隣にいる職員がお願いすると、フサエさんはまた歌い始めてくれました。

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「あめのひ かぜのひ やしないし たかやけんじのいきみずや うぶすのかみのさもあらず われらにしょうりはきっとあり いわえきたえし うちのうら いわえきたえし うちのうら」

早速、職員は歌い出しやメロディを検索するのですが全くわかりません。周りのお年寄りに尋ねてみても、誰も知りません。

「しょうりはきっとありってあるけん。軍歌じゃないと」と一人が言います。すると誰かが軍歌で検索します。けれど、これも出てきませんでした。

「うちのうら」はフサエさんの故郷です。今度は「うちのうら」をキーワードに調べましたが・・・、わかりませんでした。

この日は何度フサエさんに歌ってもらったでしょうか。聞いていた職員も覚えてしまうほどでした。けれど、結局何の歌かわからないままでした。

夕方になって、フサエさんをお迎えに娘さんが来られました。”その歌”について職員が娘さんに尋ねると、それはなんとフサエさんの小学校の校歌なのでした。

Σ(゚Д゚)!!

私たちは、今日一日のモヤモヤがすう~と晴れていくような気持です。そして娘さんも一緒に、もう一度フサエさんの”その歌”を皆で歌いました。

あれから、一年近くが経ちます。フサエさんは今も時々”その歌”を歌います。歌い始めると、職員も他のお年寄りも一緒に歌います。あの日から、”その歌”は、私たちも知っている歌になりました。

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お伽の国

この日は、第二よりあいから車2台で野多目大池を目指して住宅街をゆっくりゆっくり走っていました。家々の庭先には、ツツジが咲き誇っています。

ある家の前を通ると、赤い実をたくさんつけた木が目に留まりました。先頭の車が見えなくなってしまいましたが、車を止めるようにしながら「この木見てください。なんかたくさんの実がついてますよ。なんの木でしょうね」と助手席のチエ子さんに話かけました。チエ子さんは窓から顔を出して、「まあ、ほんと」と驚きました。
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赤い実がぎっしりと付いているその木には、大きなリンゴもぶら下がっています。不思議に思いながら目線を落とすと、玄関先に男性が座っていました。車を停止して、「すいませ~ん」と声をかけました。

「ここを通りかかったら、木に赤い実がたくさんついていて、リンゴもあって・・。リンゴの木ですか?」と尋ねると、「これはね、全部作りものですよ」と返ってきました。そして、その方は庭先からテーブルを持って出てこられました。

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車を降りて、テーブルのそばに行きました。そのテーブルの上には、たくさんの菓子パンが並べてありました。そして、これが全部作り物であることに目を丸くしました。一つお借りして、「これ、木で作っているそうなんですよ」と車中に持ち込みました。

「ほ~う、よく出来てるね」と、手に取ってかじる真似をするチエ子さんと目が合い笑いました。ハルコさんも「これ、にせもの?」と表も裏もくまなく見ておられました。

そうしている内に、先を走っていた車が、後車がついて来ないことに気づき引き返してきました。家の方は私たちを歓迎してくれ、皆さん車から降りてお庭を見せてもらいました。
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「よくできますね~」とミズエさん。本物そっくりのパンに釘付けでした。
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いろんな木の彫り物が、あちらこちらに飾られています。
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この家の方は出口さんおっしゃって、もともと大工さんをしておられたそうです。仕事を引退して、木で彫り物を始められたとか。ご近所さんやここを通る方が、お庭の飾りを楽しみにしてくれていることがとても嬉しいと笑っておられました。
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途中から隣に住む小学生の女の子が、江口さんに作ってもらったぬいぐるみの家を持って遊びに来てくれました。野多目大池を目指していたことをすっかりと忘れ、偶然出会った方々とにぎやかで楽しい時間を過ごしました(#^^#)

まるで、お伽の国に迷い込んだかのようなひとときでした。