ボソボソと何か呟くようにおしゃべりをするお年寄り。
聞き取れそうで聞き取れないそのおしゃべりに職員達はもどかしさを感じていた。
一言でも聞き取れる言葉があった日には、みんなで歓喜し、広間に集まった人達の話題はそのことで持ち切りになる。
ある日、もっとこのお年寄りの言葉を理解したい!と熱意ある一人の職員がスマートフォンを取り出した。そして、いつものようにボソボソと呟くお年寄りの口元へスマホの翻訳アプリを起動させて近づけてみた。

自分達には「ボソボソ」としか聞こえていなかったが、翻訳アプリは正確に??その言葉を聞き取った。
文明の力、スマートフォンが出した答えは、なんと!
「アゼルバイジャン語」で「なんてこったい」としゃべっているとはじき出した。
アゼルバイジャン??※アジアとヨーロッパにまたがるコーカサス山脈とカスピ海に囲まれている旧ソ連の構成国。
そんな国の言葉をしゃべっていたのですか??とそのお年寄りを囲んで小一時間の盛り上がりを見せた。もちろん、朝の申し送りでも重要事項として引き継がれた。
しかし、昨今のテクノロジーの進化には早すぎてついていけない。
近い将来、何を言わんとしているのか、何を考えているのか、行為の裏側にある気持ち等をAIによってデータ解析され、全部読み取られる時代が来るのではないだろうか。
すでに介護現場では、膀胱センサーや眠りスキャン等の機器は活用され、身体面での見える化?に使用されているようで…。

顔を合わせて話をし、手探りしながら緊張感を持って築き上げていく関係作りは非効率とされ、AIによってプランが作成され、マニュアル通りにお年寄りとの関係をつくるようになる時代に突入していくのでしょうかね。
ICTやAIの活用によって効率的になり、便利になる面は多々あるとは思うが、それと引き換えに失われていくものの方がむしろ大きいような気がする。

自分達は、これからも曖昧さのある牧歌的な暮らしの中で、一人一人が集いの中で醸し出す小さな小さな物語を楽しみたいと思うし、むしろ、それがこの仕事の醍醐味でもある。
アゼルバイジャン語?で盛り上がれるくらいがちょうど良いかな~(^O^)


⇑⇑⇑ オリジナルラインスタンプ発売中(^O^)