“その歌”は

ある日のことでした。いつものように集いの場で、皆さん新聞を読んだり、おしゃべりをしながら過ごしていました。

その中で、フサエさんが”その歌”を突然歌い始めました。フサエさんが歌うのは決して珍しいことではなく、”げんじ唐いものうた”という十八番の歌があります。

けれど、”その歌”は初めて聞く歌!!

「これ、何の歌?」フサエさんと付き合いの長い職員も聞いたことがないのです。周りにいた職員がざわつき始めます。

「フサエさん、もう一度歌ってください」と隣にいる職員がお願いすると、フサエさんはまた歌い始めてくれました。

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「あめのひ かぜのひ やしないし たかやけんじのいきみずや うぶすのかみのさもあらず われらにしょうりはきっとあり いわえきたえし うちのうら いわえきたえし うちのうら」

早速、職員は歌い出しやメロディを検索するのですが全くわかりません。周りのお年寄りに尋ねてみても、誰も知りません。

「しょうりはきっとありってあるけん。軍歌じゃないと」と一人が言います。すると誰かが軍歌で検索します。けれど、これも出てきませんでした。

「うちのうら」はフサエさんの故郷です。今度は「うちのうら」をキーワードに調べましたが・・・、わかりませんでした。

この日は何度フサエさんに歌ってもらったでしょうか。聞いていた職員も覚えてしまうほどでした。けれど、結局何の歌かわからないままでした。

夕方になって、フサエさんをお迎えに娘さんが来られました。”その歌”について職員が娘さんに尋ねると、それはなんとフサエさんの小学校の校歌なのでした。

Σ(゚Д゚)!!

私たちは、今日一日のモヤモヤがすう~と晴れていくような気持です。そして娘さんも一緒に、もう一度フサエさんの”その歌”を皆で歌いました。

あれから、一年近くが経ちます。フサエさんは今も時々”その歌”を歌います。歌い始めると、職員も他のお年寄りも一緒に歌います。あの日から、”その歌”は、私たちも知っている歌になりました。

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お伽の国

この日は、第二よりあいから車2台で野多目大池を目指して住宅街をゆっくりゆっくり走っていました。家々の庭先には、ツツジが咲き誇っています。

ある家の前を通ると、赤い実をたくさんつけた木が目に留まりました。先頭の車が見えなくなってしまいましたが、車を止めるようにしながら「この木見てください。なんかたくさんの実がついてますよ。なんの木でしょうね」と助手席のチエ子さんに話かけました。チエ子さんは窓から顔を出して、「まあ、ほんと」と驚きました。
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赤い実がぎっしりと付いているその木には、大きなリンゴもぶら下がっています。不思議に思いながら目線を落とすと、玄関先に男性が座っていました。車を停止して、「すいませ~ん」と声をかけました。

「ここを通りかかったら、木に赤い実がたくさんついていて、リンゴもあって・・。リンゴの木ですか?」と尋ねると、「これはね、全部作りものですよ」と返ってきました。そして、その方は庭先からテーブルを持って出てこられました。

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車を降りて、テーブルのそばに行きました。そのテーブルの上には、たくさんの菓子パンが並べてありました。そして、これが全部作り物であることに目を丸くしました。一つお借りして、「これ、木で作っているそうなんですよ」と車中に持ち込みました。

「ほ~う、よく出来てるね」と、手に取ってかじる真似をするチエ子さんと目が合い笑いました。ハルコさんも「これ、にせもの?」と表も裏もくまなく見ておられました。

そうしている内に、先を走っていた車が、後車がついて来ないことに気づき引き返してきました。家の方は私たちを歓迎してくれ、皆さん車から降りてお庭を見せてもらいました。
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「よくできますね~」とミズエさん。本物そっくりのパンに釘付けでした。
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いろんな木の彫り物が、あちらこちらに飾られています。
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この家の方は出口さんおっしゃって、もともと大工さんをしておられたそうです。仕事を引退して、木で彫り物を始められたとか。ご近所さんやここを通る方が、お庭の飾りを楽しみにしてくれていることがとても嬉しいと笑っておられました。
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途中から隣に住む小学生の女の子が、江口さんに作ってもらったぬいぐるみの家を持って遊びに来てくれました。野多目大池を目指していたことをすっかりと忘れ、偶然出会った方々とにぎやかで楽しい時間を過ごしました(#^^#)

まるで、お伽の国に迷い込んだかのようなひとときでした。

第2よりあいの集い

先日とても心に残る出来事があったので紹介します。

その日の昼食は、食事ボランティアの松本さんが来てくださいました。

よりあいに集うお年寄りも12人、満員御礼です。

よりあいつうしん25号で紹介したノブコさんも来られています。ノブコさんと松本さんは、毎週日曜日の教会でご一緒され、松本さんのボランティアのきっかけを作ってくれたのは、ノブコさんでした。

「松本さんが食事を手伝ってくれるなら、私も行きたい」すぐに迎えに行きました。

13年前にお母さんを第2よりあいで一緒に支えた、介護OBでもあり、よりあい世話人の純子さん。

純子さんと松本さんも、30年来の古いお知り合いで、松本さんのボランティアの背中を押してくださっていました。

松本さんがボランティアに来てくれることをきっかけに、純子さんに連絡をしました。純子さんも久しぶりの第2よりあいを楽しみに、差し入れの饅頭とエプロンを持って来られました。

今日は広間に多くの人が集っています。

このような場合、誰かは落ち着かなかったり、席を離れて行かれたりすることが多いです。しかしこの日はみんなが広間に集い、穏やかで、笑い声が多く、良い雰囲気です。

 

すぐに時間が経ち昼食が運ばれてきます。

沢山の人で囲む食卓。その日の食事も特別美味しく感じました。

食事は栄養だけでなく、その雰囲気や会話、一緒に食べるということが楽しいのです。