お伽の国

この日は、第二よりあいから車2台で野多目大池を目指して住宅街をゆっくりゆっくり走っていました。家々の庭先には、ツツジが咲き誇っています。

ある家の前を通ると、赤い実をたくさんつけた木が目に留まりました。先頭の車が見えなくなってしまいましたが、車を止めるようにしながら「この木見てください。なんかたくさんの実がついてますよ。なんの木でしょうね」と助手席のチエ子さんに話かけました。チエ子さんは窓から顔を出して、「まあ、ほんと」と驚きました。
20230407_140656
20230407_140652

赤い実がぎっしりと付いているその木には、大きなリンゴもぶら下がっています。不思議に思いながら目線を落とすと、玄関先に男性が座っていました。車を停止して、「すいませ~ん」と声をかけました。

「ここを通りかかったら、木に赤い実がたくさんついていて、リンゴもあって・・。リンゴの木ですか?」と尋ねると、「これはね、全部作りものですよ」と返ってきました。そして、その方は庭先からテーブルを持って出てこられました。

20230407_140646
20230407_140649

車を降りて、テーブルのそばに行きました。そのテーブルの上には、たくさんの菓子パンが並べてありました。そして、これが全部作り物であることに目を丸くしました。一つお借りして、「これ、木で作っているそうなんですよ」と車中に持ち込みました。

「ほ~う、よく出来てるね」と、手に取ってかじる真似をするチエ子さんと目が合い笑いました。ハルコさんも「これ、にせもの?」と表も裏もくまなく見ておられました。

そうしている内に、先を走っていた車が、後車がついて来ないことに気づき引き返してきました。家の方は私たちを歓迎してくれ、皆さん車から降りてお庭を見せてもらいました。
line_284759402902724

「よくできますね~」とミズエさん。本物そっくりのパンに釘付けでした。
line_284856983139301

いろんな木の彫り物が、あちらこちらに飾られています。
line_284829618088062
line_673486064296207
line_673504315052138

この家の方は出口さんおっしゃって、もともと大工さんをしておられたそうです。仕事を引退して、木で彫り物を始められたとか。ご近所さんやここを通る方が、お庭の飾りを楽しみにしてくれていることがとても嬉しいと笑っておられました。
line_673462006623508

途中から隣に住む小学生の女の子が、江口さんに作ってもらったぬいぐるみの家を持って遊びに来てくれました。野多目大池を目指していたことをすっかりと忘れ、偶然出会った方々とにぎやかで楽しい時間を過ごしました(#^^#)

まるで、お伽の国に迷い込んだかのようなひとときでした。

能面を割る

心疾患で2週間程入院し、無事に退院してきたお年寄り。

入院前はクリっとした大きな目を輝かせ、冗談を言ってはケタケタ笑って、場の盛り上げ役だったのだが、、退院時、その表情はまるで能面のようになっていた。

添書を見ると、入院初日にベッドより自分で降りたことが原因で、転落ハイリスク者とされていた。そのため??四方を柵で囲まれてしまい「うーご君」なるセンサーを付けられて入院生活を送ることになってしまっていた。
※うーご君とは、プレートをお年寄りの洋服に取り付け、そのプレートが抜けると音が鳴る仕組みの体感センサー。

16

四方を柵で囲まれたベッドでうーご君をつけられての入院生活。さぞ辛かったことだろう。そりゃー能面のような表情にもなる…。

それぞれの場所での事情もあり、致し方がないこともある??のでしょう。また、病院は「治療」する場所なので、安静にしておかなければならないのも理解できる。しかし、それを免罪符として、がんじがらめにベッドの上に縛り付けなければならない治療って一体なんなんだろう??と正直疑問に思う。

退院できた日から、一日一日、固まっていた表情が和らいでいくのが手に取るようにわかった。おしゃべりも徐々に増えていき、入院前のように他のお年寄りへ話しかけるようにもなった。そして、2週間くらい経過したころには、やっと以前のような笑顔とおしゃべりを取り戻すことができた。

一安心。とはまさにこのこと。

13

このお年寄りの能面が割れていく様を見ていて、改めて、お年寄り達が集う「場」の大切さと、お年寄りが必要としているありのままの暮らしを守ることの必要性を切に感じた。

老いてくると入院し、治療が必要になることは避けては通れないことなのかもしれない。ならば、自分達にできることは、治療の場から暮らしの場へいつでも戻ってくることができるように、それぞれの方に応じた「場」を準備しておくことだと感じている。

そして、これからも集いの力と場の力とお年寄り達の力を借りて、被らざるを得なかった能面を割り続けていきたい。

それにしても、、能面にひびが入り、割れていく様をみているのはこれ以上ない喜びだった。

このような経験ができるのもこの仕事の醍醐味の一つなのだが、、できるならば、このような事例のように、心を閉ざさざるを得ないような社会環境、社会構造というべきものが少しでも改善されていけばな、、、と願っている。

1661849702427

職員さん募集中!

宅老所よりあい、第2宅老所よりあいにて一緒にお年寄り達の暮らしを支えてくれる介護職員さんを若干名募集してます!
介護員募集(夜勤あり)【宅老所よりあい・第2よりあい・よりあいの森】
介護員募集(夜勤なし)【宅老所よりあい】
↑ 細かい情報になります。
ご興味のある方は見学からでも構いませんので、ご連絡いただけたらと思います。

 

宅老所よりあい、第2宅老所よりあいは、認知症対応型のデイサービスです。
日々、10人~12人くらい通ってこられるお年寄り達との時間を過ごしています。また、自主事業で泊りの支援もしています。

日課やスケジュールはなく、その日その日の顔ぶれや、それぞれの体調、様子によってその日限りの集いの場をつくって過ごしています。

お年寄り達の「今」を大事に、認知症やぼけを抱えたとしても、老い、病気による不自由を抱えたとしても、本人が望むであろう、ありのまま、あるがままの暮らしができるような支援に努めています。

それは決して簡単なことではありませんし、楽な仕事ではありません。けれども、目の前のお年寄りを中心とした、ぶれない支援ができる場所でもあり続けたいと思っています。

まずは、この場所の空気感に触れてみるだけ、、でも構いません。ぜひ足を運んでいただきたく思っています。

ご連絡お待ちしております。
1662949560893
1669207732998IMG_1216
募集ポスター三案

第2よりあいの集い

先日とても心に残る出来事があったので紹介します。

その日の昼食は、食事ボランティアの松本さんが来てくださいました。

よりあいに集うお年寄りも12人、満員御礼です。

よりあいつうしん25号で紹介したノブコさんも来られています。ノブコさんと松本さんは、毎週日曜日の教会でご一緒され、松本さんのボランティアのきっかけを作ってくれたのは、ノブコさんでした。

「松本さんが食事を手伝ってくれるなら、私も行きたい」すぐに迎えに行きました。

13年前にお母さんを第2よりあいで一緒に支えた、介護OBでもあり、よりあい世話人の純子さん。

純子さんと松本さんも、30年来の古いお知り合いで、松本さんのボランティアの背中を押してくださっていました。

松本さんがボランティアに来てくれることをきっかけに、純子さんに連絡をしました。純子さんも久しぶりの第2よりあいを楽しみに、差し入れの饅頭とエプロンを持って来られました。

今日は広間に多くの人が集っています。

このような場合、誰かは落ち着かなかったり、席を離れて行かれたりすることが多いです。しかしこの日はみんなが広間に集い、穏やかで、笑い声が多く、良い雰囲気です。

 

すぐに時間が経ち昼食が運ばれてきます。

沢山の人で囲む食卓。その日の食事も特別美味しく感じました。

食事は栄養だけでなく、その雰囲気や会話、一緒に食べるということが楽しいのです。